イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「エレオノーラほどの才女は、キリリシアでもなかなかいらっしゃらなくてよ? きっとご幼少のころからとても熱心に勉学に励まれたのでしょうね」

 いつものように、おっとりとポーレットが助け舟を出してくれる。

 アディが愚痴って、エレオノーラに叱り飛ばされ、ポーレットがとりなす。この一週間でそんな流れができあがりつつあった。 

 ちらりとポーレットを見たエレオノーラは、つん、とそっぽを向いて言った。

「もちろんですわ。……所詮、女には必要ない知識だ、と父には言われましたけれど」

 その言葉は、少しだけ寂しそうに聞こえた。

< 106 / 302 >

この作品をシェア

pagetop