イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
呼ばれて、アディは、はっと我に返った。ルースは、他の二人の執事と違って洗練されたリードをとりながらアディと踊っている。

「あなたが見るのは、私です」

 ルースが、ぐい、とアディの腰を抱いた手に力をこめる。さらに体がふれあい、アディの動悸が早くなった。

(あら?)

 熱くなる頬で、アディはふと、気がついた。

 以前パーティーで他の男性とワルツを踊った時は、ここまで密着してはいなかったし、こんな風に指を絡めて繋ぐことはなかった。そう思い出して、アディは他の二人の様子をうかがう。

 やはり、エレオノーラもポーレットも、アディたちほどはくっついてなかった。

 また気もそぞろになったアディの耳元で、ルースは囁くように言った。

< 112 / 302 >

この作品をシェア

pagetop