イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「はい。順調に進んでおります」

「そうか。顔をあげよ」

 言われて、アディたちは姿勢を正す。

 アディは、社交界にデビューしたときに、一度だけ国王と対面していた。がっしりとした体つきは、その時と全く変わらずに見える。健康的に焼けている顔は、いつか垣間見た王太子とは真逆の印象を受けた。

 その視線は、射抜くような強さでアディたちに注がれていた。アディは緊張を覚えて、無意識のうちに背筋が冷たくなる。

 ひとりひとりと視線を合わせた後、国王は再びルースに聞いた。

「王太子妃となる女性の条件を、忘れてはいないだろうな」

「はい」

(条件?) 
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