イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
(な、なんだ……そういうこと)

 ルースの指導に振り回されるばかりで、アディが大きなため息をついた時だった。

 かちゃり。

 なんの前触れもなく、ホールの扉が開いた。入ってきた人物を見て、アディは思わず足を止める。他の二人も同じように止まってしまった。

 ゆっくりとホールへ入ってくるその男性を、見間違える者はここには誰もいない。

 アドルファス・ド・キリリシア。このキリリシア王国の国王、その人だ。

 その場にいた誰もが、一斉に膝を折った。

「様子は、どうだ」

 アディたちを一瞥すると、国王はルースへと聞いた。
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