イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「それは、まだ私の口からは申し上げられません」

「その条件を満たさないと、王太子妃として認められないという事ですね?」

 エレオノーラが重ねて聞く。

「はい。国王より、たった一つだけ、王太子妃となる女性の条件をいただいております。ですが、これはあなたたちが知る必要のないものですし、ささいなことですのでそれほど気にすることもございません」

 涼しい顔でルースが言った。

 アディは、国王の去った扉を見つめる。

 自国の国王が良い王なのか悪い王なのか、アディにとってはよくはわからない。社交界に詳しくないアディにとって、国王は遠い存在だ。

 だがたった一つだけ、国王のことで印象的なことがある。それは、国王が妾妃をもたなかったことだ。

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