イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
片手で顔を隠しながら、ルースは言った。

「も、申し訳ありません。ですが、やはりあなたは……」

「はあ……」

 いまだくっくっと息を整えながら笑う姿は、普段のすました態度からは想像もつかない。

「そうですね。私こそ、彼の未来を信じなくてはなりませんね」

「そ、そうですよ!」

 ここぞとばかりにさらに、ぐっと拳を握りしめて、アディは言った。

「私だって、王太子妃となったあかつきには、妻としてお側で殿下を支えていくつもりですもの。そうなったら私は、あなたの主の妻ですよ! きっと私がこき使って差し上げますから覚悟するといいですわ!」
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