イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「あなたが、殿下の未来を信じなくてどうします? たとえ王宮の誰もが、この国の誰もがすでに彼を見限ったとしても、あなただけは最後まで殿下の側にいるという覚悟はないのですか? 殿下に一番信頼をいただいている自覚があるのなら、そしてそれを誇りに思うのなら、あなただけは何があっても殿下を信じていてください。あなたはそれを殿下に許されているのですから! それなのに……なにふざけたことを言っているのですか、このあんぽんたん!」

 鼻息荒く言い切ったアディを、ルースは、じ、と見ていた。二人の間に、しんとした沈黙が横たわる。

 と。

 くしゃり、とその顔が歪んだかと思うと、突然ルースが笑い出した。声をあげながら、笑うルースを、アディは呆気に取られてみている。

 それは、初めて見る姿だ。

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