イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「お前さ……あんまり無茶すんなよ」

「なによ、その言いぐさは。せっかく助けてあげたのに」

「いつも教会の司祭様に言われているだろ。お前も一応年ごろの女なんだからおとなしくしろって。それじゃいつまでたっても嫁の貰い手なんかないぞ」

「し、司祭様には黙っていてね。それに、助かったんだからいいじゃない」

 二人は、同じ町の教会に通う幼なじみだ。

「何より、女が飛び蹴りなんて、ありえないだろう。これだから庶民は……」

「失礼ね。だいたい、なんであんなのに絡まれていたのよ、クレム」

 クレムと呼ばれた年上の少年は、不機嫌を隠そうともしないでアディを見つめている。

 少し憂いを帯びたその顔は、他の女性が見たら一様にうっとりするであろう魅力を含んでいた。しかし残念ながら、アディは彼に全然興味がなかったので、見つめあっていても何とも思わなかった。
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