イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「君は、いい子だね」

「な、あの……!」

「君が……に……なってくれたら……」

「何?」

 聞き取れない言葉をアディが問い返すと、フィルはアディを抱きしめたまま言った。

「それならば余計に、君も気をつけた方がいい」

「気をつけるって……どういうこと?」

 アディが目を丸くすると、フィルは体を離した。その表情は、先ほどとは違ってどこか緊張したように引き締められている。

「君が本当の気持ちを話してくれたお返しに、僕も少し助言をしてあげる。……テオフィルス殿下はね、子供のころから何度も殺されかけてきたんだよ」

「え?」

 意外なことをきいて、アディはきょとんとする。深い青の瞳が、アディを見つめていた。
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