イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「私もその考えには大賛成よ。でも、私が王太子妃になったら家や領地の人々を守ることができるの。それはとても魅力的だわ。あ、だからといって」

 アディは、つい本音をもらしてしまったことに照れるように笑った。

「別に、私さえ我慢すれば、なんてしおらしく思っているわけじゃないのよ? 私だって、ちゃんと幸せになりたいもの。お嫁に行くなら好きな人のところに、って言ってくれた父様の気持ちをくんであげられなかったのは心残りだけど……でも私、後悔はしてないし、今は本当に、王太子殿下の側でお力になりたいと思っているの。それは、本当だからね」

 照れ隠しのように笑ったアディを、フィルはふいに抱きしめた。

「フィ……フィル?!」

 ふわり、とかすかに甘い香りがアディの鼻腔をくすぐる。
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