イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「そうですね。あの方ももう長くここにお務めですけれど、あんな表情は見た覚えがありませんねえ」

「どんな顔してました?」

「何といいましょうか……冷静沈着なあの方にはめずらしく、思いつめたような、我を失ったような顔をしておられましたね。もしかして、何か大きな失敗でもしたのかしら」

「失敗……」

 アディを抱きしめたことを、ルースは後悔しているのだろうか。そう思うと、アディの胸は先ほどとは違う感情で痛くなる。

「そうなんですか……」

 うつむいてしまったアディを見て、マルセラは微笑む。

「モントクローゼス様がお気に病むことはありませんよ。むしろ、彼にとっては良いことなんじゃないかしら」

「失敗が……ですか?」

 アディは、歩き出したマルセラと一緒に離宮に向かう。
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