イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「あんなふうにご自分の感情を表されることは、彼はめったにありませんから。ほら、あの方、生意気でしょう? 普段からなんでもご自分の思う通りになると思っていらっしゃるので、たまにはいい薬です」

「は、はあ……」

 思ったよりマルセラの口はきつい。年上のマルセラから見たら、ルースの意地悪もそのように見えるのだと、アディはなんだかおかしくなった。

 ルースの事を語るその目が慈愛に満ちて見えたので、余計に微笑ましく思ったのかもしれない。その口調は、まるで母親が自分の子供に文句を言いながらも愛しくてしようがないと言っているようだった。

「そういえば」

 くすくすと、マルセラは何かを思い出して笑った。

「モントクローゼス様がいらっしゃった日、彼がひどく落ち込んでおりましてね」

「落ち込む? ルースがですか?」

「ええ」

 一体どんな理由なら、あのルースが落ち込むのだろうか。
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