イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「邪魔はしないよ。ルースがアディをいじめないか見張っているだけ」

 どうやってもフィルに帰るつもりがないことを悟ると、ルースは再び深い溜息をついた。

「アデライード様。これは無視して結構です。いないものと思ってください」

「はあ……」

 おどろおどろしい声でルースが言って、アディがまた本を手にした時だった。


 ぽとっ。


 アディの目の前の机に、一本の矢が落ちてきた。

(え?)

 と、アディが思った次の瞬間、すばやい動作でルースがアディの体を自分の腕に抱え込んだ。窓から庭へと身を乗り出そうとするフィルに、ルースが叫ぶ。

「追うな!」

 その一言で、フィルの動きが止まる。飛び出そうとしたままの格好で外を睨んでフィルが言った。
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