イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「北の塔だ」

「衛兵!」

 フィルが見上げた先には、高い見張りの塔があった。ルースの声に反応して、廊下にいた衛兵が扉をあける。

「北の塔に侵入者! 追え!」

「はっ!」

 第二矢がこないことを確認したルースが、アディから離れる。窓を閉めたフィルは、睨むように塔を見上げていた。

「ふーん、あの距離から矢をかけてきたのか」

「あわよくば、くらいの気持ちだろう。本気で狙ってくるには距離がありすぎる」

「すぐ裏が通りに通じる森だ。いつも衛兵が詰めていると思って、油断したね。まわりの木をきれいに刈り込んだのが裏目に出たかな」

「至急、衛兵の配置を見直そう」

 机の上に落ちた矢を取りあげながら、苦々しくルースが言った。
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