イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる


 その日の午後も、いつものようにルースの講義が始まった。

 講義室にいく道すがらアディは、廊下で行き交う衛兵がちらほらと増えていることに気づいた。エレオノーラたちがそれに気づいたかどうかはわからないが、離宮内がどことなく緊張感に包まれていることには気づいているようだ。

 お昼もほとんど喉を通らなかったアディは、講義が始まってもルースの声をぼんやりと聞いていた。

「……ですか? アデライード様」

 急に名を呼ばれて、アディは我に返った。

「は、はい?」

「おや、目を開けたまま眠るとは、ずいぶん器用な真似ができるのですね。いっそのこと王太子妃ではなく、旅芸人の道化をめざしたらいかがでしょう」

「……!」
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