イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「だって……あの方は、わたくしには何も言わないけれど、本当は王太子になりたいのだと……王太子となって国のために働きたいはずだと……だから、わたくしは……」

「ウィンフレッドが、それを?」

 それを聞いて、ポーレットは、はっと一度目を見開くと、がくりと首を落としてシーツに埋もれた。おそらく、ウィンフレッド本人から聞いた言葉ではないのだろう。

 ポーレット自身も、半信半疑だった。

 彼女の知るウィンフレッドは、わがままで自分勝手でずるくて、でも王太子を殺そうなどという大それた考えなど持つことなどできない小心者で優しい男だった。

 けれど、王太子になることが、口にはできない彼の望みだよと何度もささやかれ、最初は否定していたポーレットですらも、もしかしたら、と疑いを持つようになってしまった。
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