イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「あの、でもっ、けがはなかったわよ! ほら、私は元気だから大丈夫!」

 あまりのポーレットの剣幕に、とっさにアディは妙な答えを返してしまう。

 呆然として力の抜けたポーレットから手を離し、ルースがその手にあったナイフをとりあげた。

「あなたを王太子妃にしたい方は、あなた以外はすべて邪魔者なのですよ」

「そんな……まさかアデライードまで……そんなこと、一言も……」

 ようやくポーレットは、自分がなにに巻き込まれているのかを悟った。

「わたくしは……なんてことを……」

 ぬぐうこともせずにベッドに涙を落とし続けるポーレットに、アディはかける言葉が見つからない。
 ここまでくればさすがのアディにもわかる。ポーレットの想い人は、ウィンフレッドだったのだ。

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