イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「あなたには、聞きたいことがたくさんあります」

 ルースが背後へ声をかけると、カーテンの陰にいた衛兵が三人、ポーレットのまわりに集まる。そのうちの二人に、アディは見覚えがあった。

 エレオノーラとポーレットについていた、専属の執事だ。

 ルースは胸のポケットからハンカチを出すと、ポーレットの口に巻いた。

「やめて! そんなことしなくてもポーレットは騒いだりしないわ!」

 脱力したポーレットの姿は、もう反抗する気などないのは明白だ。近寄ろうとしたアディを片手で制して、ルースはポーレットを連れて行くように衛兵に命じた。
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