イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「ポーレットにひどいことしないで!」

「彼女のためです」

「何がよ! あんなひどいこと……!」

「ああでもしないと、彼女は自ら命を絶ちかねませんから」

「……え?」

 乱れたベッドと天蓋を直しながら、ルースは淡々と言った。

「自分の口から、ウィンフレッドの名が出るくらいなら、きっと彼女はそうするでしょう」

 自分の命と引き換えにしてまで、彼女に王太子を暗殺させようとしたウィンフレッドを守ろうとするのか。

 ポーレットがそれほどに激しい想いを抱えていたことに、アディは胸を締め付けられる。

「どうして、そこまで……」

 いつも穏やかで、頬を染めて『好きなのよ』と微笑んだポーレット。その彼女が、ナイフを片手に王太子を殺そうとしたのだ。

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