イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「……自分のものになれ、と言ったのは、冗談だったのですか?」

 場違いな質問だということは、アディ自身もわかっている。それでも勇気を出して問いかければ、ルースは平然と言った。

「候補というお立場のご令嬢でしたら、手を出してもそれほど罪にはなりません。決定権は私にあるのですから、あなたを王太子妃にしなければいいだけのことです。ですが」

 ルースは、視線をそらしたまま続けた。

「妃になることが決まってしまったら、あなたは私の主です。過ちを犯すことなどできません」

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