イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
呼ばれてアディに軽く笑顔を見せると、フィルは男を押さえつけているルースに駆け寄った。

「こいつ一人だけ?」

「ああ、捕まえた。そっちは?」

「僕がへまするわけないじゃん」

 窓の外がなにやら騒がしい。どうやら、衛兵が来たようだった。

「フィル! どういうことなの?」

「間にあって良かった。アディも大丈夫だった?」

 にっこりといつもの笑顔で言うと、フィルは床に落ちていた短刀を拾った。

「あ、うん。私は大丈夫だけど……」

 扉が開く音がしてアディが振り返ると、廊下から幾人もの衛兵が入ってくる。ルースが、捕まえた男を彼らに引き渡すと立たせて縄をかけた。
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