イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「これで全部か?」

 ルースが言うと、持っていた短刀を衛兵に引き渡したフィルが顔を引き締めた。

「外で二人捕まえたから、これで全部。案の定、今日を狙ってきたね。あと残るは、例の親玉だけだよ。それより」
 フィルは両手を腰に当てて、わざとらしくルースを睨みつける真似をする。

「こいつらは僕が始末するから、無茶するなって言ったじゃん。今日は大事な日だっていうのに、怪我でもしたらどうすんのさ」

「俺が守らないで、誰が彼女を守るんだ」

 傲岸に言い放ったルースに、フィルは軽く肩をすくめた。

「あとは僕がやっておく。テオもちゃんと支度して」

 その言葉にアディは目を丸くする。

「テオ……って……」

 呆然とするアディを見て近づくと、フィルは姿勢を正して微笑んだ。
< 257 / 302 >

この作品をシェア

pagetop