イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「そ、それは……見てたのですか?!」

「あれは実に見事な蹴り技でした」

 くすくすと、ルースが笑う。

「最初は信じられませんでしたよ。病弱な深層のご令嬢だと思い込んでいた方が、野菜を値切ったり教会で子供たちと泥まみれになって遊んだり……アレが本当に伯爵令嬢なのかと、フィルと何度も確認しました」

「は、はあ……」

 アディは真っ赤になって顔を片手で覆った。

 そう言えばあの頃、クレムはよく兄が帰ってきていると言っていた。王宮からの知人とは、ルースの事だったのだ。
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