イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
仲間外れにされたようでアディは少しだけふくれっ面をするが、フィルとテオの間には、アディには入り込めない何かがあることは常に感じていた。それはきっと、幼い頃から一緒に苦難を乗り越えてきた二人だからこそ持つことのできる何かなのだろう。

「くやしいけれど、フィルが相手では仕方ないわね。許して差し上げますわ」

 わざと尊大な態度で言うと、フィルがこそっとアディの耳元で囁いた。

「じゃあ、今度テオに内緒で、僕と二人だけの秘密、作ってみる?」

「へ?」

「フィル!」

 テオに鋭い声をかけられたフィルはすました笑顔を作ると、優雅に一礼して大広間を退出していった。

  ☆

 その夜、寝室のベッドの上でアディは、クッションを抱きしめながらウィンの言葉を思い出していた。

「どうした」

 あとからベッドへとやってきたテオが、思いつめたような顔のアディの隣に座る。
< 294 / 302 >

この作品をシェア

pagetop