溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「俺が恋愛に不自由するかしないかは、まったく関係がないと思うけど」


お、怒ったかな……? いくらなんでも、不躾過ぎた?


穂積課長の声音が低くなったような気がして不安になり、視線が泳ぎそうになる。
優しい課長しか知らなかった私にとって、昨夜知った素顔はまだ刺激が強かった。


「……まぁいい。今は別に、この話はしなくても問題ない」


少しの間を置いて、穂積課長は納得したかのように静かに零した。
独り言なのか私に向けられていたのか考えるよりも早く、課長が口元を小さく緩めた。


「お互いフリーだし、俺は遊びのつもりはない」

「え?」


たしかに、遊び相手にしてはリスクがあるし、少なくとも私が知っている穂積課長ならそんなことはしない。
だけど、改めて口にされると課長に『真剣だから』と告げられているような気がして、ますます戸惑いが大きくなった。


なにか言わなきゃ……。なんでもいいから早くっ……!


その思いは頭の中でグルグルと回り続けるだけで、言葉はひとつも出てこない。

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