溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
次に穂積課長が言葉を紡いだら、私はきっと断れなくなってしまう。


そんな予感がしていたからこそ、早くなにか話すべきだったのに──。

「昨日言ったことはちゃんと守るし、青山にとってこの関係がいいものになるように最大限の努力もするつもりだ」

課長は真剣な雰囲気を孕んだ微笑みを浮かべたまま、私の心を掴むような台詞をいとも簡単に口にした。


トクン、と胸の奥が高鳴る。

それは真っ直ぐに向けられた柔らかい笑みのせいか、優しい口調で紡がれた言葉のせいか、よくわからない。
もしかしたら、会社では見たことがない男性らしさに釣られただけなのかもしれない。


それでも、たしかに胸の奥がキュッとなって、同時に甘さを携えた感情が芽生えた。


不覚にも、私は嬉しいと思ってしまっていたのだ。


だって、ただ『好き』と言われるよりも、ずっと嬉しかった。
ちゃんと私のことを見て向き合おうとしてくれているような気がしたし、なによりも今までこんな風に言ってくれた人はいなかったから。

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