溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「金曜、誰か空いてないかな?」


空っぽのパスタの容器と空き缶を片付けながら、思わずそんなことが口をついた。


多恵は無理だったけれど、同僚や友人に当たればひとりくらいは付き合ってくれる子がいるかもしれない。
だけど、スマホを片手にメッセージを送ろうと思い浮かんだのは彼氏持ちの友人たちばかりで、彼女と似たような答えが返ってきそうな気がして手を止めた。


「しばらく恋してないなぁ」


ぽつり、ため息とともに落ちた言葉。
落胆や寂しさの混じったそれは、独り身だということを痛感させられる。


別に、今すぐに結婚したいとは思っていない。
二十七歳なのに悠長なのかもしれないけれど、それでもまずは結婚よりもちゃんと恋がしたいと思っているから。


美人でも可愛いわけでもないし、秀でた才能もない。

そんな私は、なにもかもが平均をいく普通のアラサーだけれど、人付き合いは好きだから友人はそれなりにいるし、過去には彼氏だっていた。
その人数は片手で充分足りてしまうほどだけれど、なぜかいつも半年も経たずに振られてしまい、誰とも長く続いたことがない。

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