溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「莉緒」


穂積課長の声が、私を甘く呼ぶ。
何度も何度も繰り返し、想いを紡いでくれる。


これからのことを考えると不安はあるし、平凡な私で本当にいいのかという気持ちもあるのに……。優しく抱きしめてくれるこの人を支えたい、と心から思った。


『じゃあ、俺としてみるか?』


ふと脳裏に過ったのは、はじまりの言葉。
私たちの甘い関係は、課長のこの一言から始まった。


会社では、癒し系で仕事のできる、優しい上司。
だけど、一歩外に出ればその仮面ははらりと剥がされ、実に魅惑的な笑顔を覗かせる蠱惑的な男性。


艶麗な笑みを浮かべる意地悪なカレの愛し方は、いつだって私の心を翻弄してくるけれど……。私だけに与えられる甘ったるいくらいの優しい溺愛は、私の心を幸福感で満たしてくれる。


「莉緒、愛してるよ」


甘美な熱に溺れる私の鼓膜に届いたのは、愛おしい恋人の声。
私は、ありあまるほどの多幸感を抱きながら、終わらない甘やかな夢の中にゆっくりと堕ちていった――。

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