溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「えっ、ちょっ……! 課長……!」


目を真ん丸にする私の唇が、穂積課長に塞がれてしまう。
外に出す寸前だった抵抗の言葉は飲み込まされて、代わりに舌を差し込まれた。


口内をじっくりと辿られたあと、反射的に引っ込めてしまっていた舌が捕らわれる。
お互いの熱ごと絡み合わせるようなキスは、嫌になるくらい甘ったるかった。


「んっ……! あっ、課長……待って!」

「こら」


ウエスト辺りを撫でた骨張った手にルームウェアを軽く捲られ、私は慌ててそれを制しようとする。
だけど逆に、課長にたしなめるように唇を食まれた。


「課長じゃないだろ?」

「あっ……」

「ほら、ちゃんと呼んで」


瞳を緩めて、優しく声をかけられて。
蜂蜜を溶かし込んだように甘い空気を作った穂積課長によって、私はあっという間に従順にさせられてしまう。


「智明さん……」

「よくできました」


それなのに、課長が柔らかい笑顔で褒めてくれるから。
真っ直ぐな瞳が、子どもみたいに嬉しそうだから。
心の中では、やっぱりずるい……と思う私がいるのに、不満なんて欠片も出てこなかった。

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