溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
俺たちの関係性が変わったのは、この一献でたまたま鉢合わせた日のことだ。
一献は隠れ家のような居酒屋で、社内の人間が来ることは滅多になさそうだということもあり、元康の店というのを差し引いても気に入っていた。


俺しか使わないこの部屋の居心地は好く、仮に社内の人間が一献に来ても顔を合わせる機会はそうないだろうと思っていたのだが、あの日はひとりで来ていた莉緒とばったり鉢合わせたのだ。
彼女は驚いていたが、素で元康と話している姿を見られた俺の方がずっと驚愕していた。


その後、元康の勧めで一緒に飲むことになったものの、俺のことをどうにも安全圏の男だと認識しているらしい莉緒に、いささか不満が芽生えた。
もちろん、彼女に他意がないことはわかっていたが、いくら上司と部下とはいえ、男とふたりきりでいても無防備な姿を見せるところには苛立ちも感じた。


そして、酔いに任せた可愛い姿でいじらしいことを言った莉緒を見て、自分の中のなにかが変わる予感を抱き……。気づいた時には素の表情で話し、最終的には彼女にキスをした。

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