溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「そんなわけないじゃないですか! 課長が『おい』なんて言うの、聞いたことないですよ!」

「だから──」

「しかも、『お前』なんて似合わないことまで言わないでくださいよー。課長のファンが聞いたら、びっくりしますよ!」


似合わない言葉ばかりを口にする姿がなんだかおかしくて笑い続けていると、穂積(ほづみ)課長が大きなため息をついた。
そのあとに聞こえてきた舌打ちは、それこそ聞き間違いに決まっている。


だけど──。

「言っておくけど、こっちが素だから。穏やかで優しくて人当たりのいい課長は、仕事用のキャラなんだよ」

まるで開き直ったような言葉が零され、課長を見ればなぜか鼻で笑われてしまった。


驚きのあまり持っていたグラスを落としそうになったけれど、残っていた理性でなんとか手の中に止め、慌ててテーブルに置く。


「光栄だろ?」


にっこりと微笑むのは、優しくて穏やかで癒し系だと言われている“あの課長”と本当に同一人物なのかと、彼を見ている自分の目を疑わずにはいられない。

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