溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
一度目は、強引に唇を奪われて。
あまりにも突然のことに、なにがなんだか理解できなかった。


二度目は、一度目のキスのあとに離れた穂積課長の瞳が私を真っ直ぐに見つめたかと思うと、再び課長の顔が近づいてきてそっと口づけられた。


そして、三度目は……。

キスの予感はしていたのに、穂積課長に顎を掬われた時には逃げるどころか自らほんの少しだけ顔を寄せ、あろうことか瞼まで閉じてしまった。
そのまま優しく触れたあとに唇を何度か食まれ、そのもどかしさを孕んだような甘い感覚に夢中になっていた。


キスなんて、恋人同士がするものだと思っていた。
少なくとも、私は今までずっとそうだった。


だけど……数秒間の二度のキスのあとに起こった三度目のそれは、言い訳なんてできないほどの時間を掛けて交わし、ようやく離れた時には唇は濡れていた。


あの状況で、三度目のキスも無理矢理だった、なんて言えない。
例え雰囲気に流されてしまったのだとしても、最後のキスは合意していたも同然だった。

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