極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
嫉妬で気づいた想いのせいで、散々振り回して、傷つけて。
独占欲を剥き出して、腕の中に閉じ込めてしまいたいと考えて。


そんな俺の想いは、まるであの日のパヴェ・ド・ショコラのようにグチャグチャな形をしていて、決して綺麗なんかじゃない。
だから、身勝手過ぎるこんな想いは、恋とは呼べない。


だけど、それでも俺は──。

「一生かけて、骨の髄まで愛してやるよ」

雛子のことを、愛している。


“愛している”なんて口にはできないけれど、その言葉に収めることはできないくらいに、彼女のすべてを愛している。
何物にも変えがたいほどに、大切だと思う。


我ながら狂っているな、と自嘲の笑みが漏れた時、色気を孕んだ潤んだ瞳が俺を捉えた。
ゆらゆらと揺れているようにも見えた瞳は、一瞬で真っ直ぐなものになる。


「……はい」


乱れた呼吸の合間にそう零した雛子は、なぜか多幸感に塗れた笑みを浮かべていて……。
俺たちはやっぱり似ているな、と彼女を見下ろしたままで苦笑する。


バカだな……。
俺なんかに捕まらなければ、穏やかな恋愛ができたかもしれないのに……。


それでも、独占欲に支配されるかのように、俺は今この手の中にある存在を手放す気はない。

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