極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜【コミカライズ配信中】
しばらくの間、私は呆然としていたけれど──。

「あっ、ありえないっ‼︎」

ようやく頭の中を整理できて、飄々としている端正な顔をキッと睨んだ。


「どうしてそんな嘘つくんですか⁉︎ この一週間、私がどれだけ編集長に嫌味を言われたと……」


元カレに浮気されて振られたことよりも、篠原に抱かれたことよりも……。この一週間の苦労に、泣きたくなる。


「知るか」

「先生は、そんなに私のことをいじめたいんですか⁉︎」

「違う……くはないか。お前をいじめるのは楽しいし」

「本当、最低っ‼︎」


すると、また大きなため息を漏らされた。睨み続ける私に、彼がなにかを諦めたような顔を見せる。


「あのな……原稿渡したら、お前は次の打ち合わせまで来なくなるだろ。そしたら、またしばらく会えなく──」

「当たり前じゃないですか! 私は、先生の専属じゃないんですよ!」

「おい、ちょっと待──」

「会社に戻ったら、他にもやらなきゃいけない仕事だっていっぱいあるんですから!」

「いや、だからな──」

「だいたい、先生は作家としては一流で素晴らしい方かもしれませんが、人としては本当にどうかと思います!」


悔し紛れに篠原の言葉を遮り続けると、彼は何度目かわからないため息をついた。

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