極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
「俺から編集長に話をつける。お前が出席しないなら俺も出ないって言えば、お前ひとりくらい出席させるだろ」


たしかに、私が出席することで篠原がパーティーに出るのなら、その条件は通るだろう。
ただ、彼以上に社交的な場が苦手な私にとっては、拷問以外の何物でもないのだけれど……。


「わかりました。許可が出れば、先生がおっしゃるようにします」

「あぁ」


篠原は満足げな笑みを浮かべたかと思うと、私を抱き竦めた。


「ちょっ……! 先生⁉︎ 私、今日は仕事で……」


身を捩ろうとすると、それよりも強い力で体を押さえ込まれてしまう。


「パーティーに出てやるんだから、これくらいはいいだろ」

「で、でも……」

「ゴチャゴチャうるさい。俺はちゃんと原稿も上げたし、大嫌いなパーティーにも出るんだ。これくらい、ケチケチするなよ」


言い終わると同時に私の顎を指先で掬った彼は、抵抗の言葉を紡ごうとした唇を塞いだ。
啄むキスを二回落とされ、舌が絡め取られてしまう。


こんなキスをされて抵抗できるほど、私の意志は強くない。


いくら境界線を張ろうとしても、篠原は私のガードを簡単に壊してしまうのだから……。
この恋は、きっと媚薬よりもタチが悪い──。

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