旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
残業なんて、いつ振りだろう。
皆が帰った後も午後から取りかかっていた製品の絵付けをしていると、ここでは滅多に聞くことのない革靴の足音が遠くから響いた。
まだ十八時を回っていない。
本当に急いで来てくれたのかな。
手を止めて身体ごと扉に向けると、作業場へ入ってきた宝来部長は数時間前に見た時と変わらず、仕立てのいい三つ揃えのスーツを着ていた。ちなみに私は昼休憩に着替えたので、テーパードタイプのデニムに、白シャツに黒のパーカーを羽織っている。
これがいつもの恰好なのだから仕方ないのだけど、宝来部長を前にするとすごく恥ずかしい。
「お疲れ様です」
さっと立ち上がった私を目に留めて、宝来部長は柔らかい笑顔を見せた。
「お疲れ様」
心臓は性懲りもなく大きな音を立て始める。
相手が経営企画部長なので緊張して当たり前なのだが、それ以前に彼の顔がとても好みなのだ。
まいったなぁ。