旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「ひとりにしてごめん」

 すぐに香澄が俺の腕から必死に逃げようとする。

「成暁さん!」

「なに?」

「公衆の面前でこんなことをしてはいけません!」

 アメリカの大学に通っていた身としては、このくらい別にどうってことないと思うのだけど。

 恥ずかしがる姿が可愛くて、わざと離してやらなかった。

 一分、いや、三十秒くらいだろうか。やっとのことで腕から解放すると、香澄は複雑な表情を湛えていた。隣に座っていた女性たちはいなくなっている。

「悪かったよ。ほら、ソーセージ食べたいって言ってただろ?」

 差し出すと、香澄は無言で食べ始める。

 怒っているようには見えない。けれど、いつもと様子が違う。

 しげしげと眺めていたら、香澄はどこか辛そうな顔をした。

 ソーセージが不味いとか?

「言いたいことがあるなら、言って」

 促すと、予想外の言葉が返ってきた。

「……ごめんなさい」

「え?」

「さっきの女の子たちが、成暁さんのこと見ていたから」

 言われたことがすぐに理解できずポカンとする。
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