旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
何事かと顔を動かせば、いつの間にか隣に男女ふたりが座っていて、どうやら香澄の腕と男性の腕が当たってしまったようだった。
なんで男が香澄の横に座ってるんだよ。
舌打ちしたい気持ちを押し込めて立ち上がる。
「香澄、こっちに座ってろ。なにか食べるもの買ってくるから」
俺が座っていた場所に香澄を移動させ、空いた場所にはハンカチを置いた。
戸惑う香澄を置いてその場を立ち去る。
……やってしまった。
大人げない態度をとってしまったことに、情けなさで頭を抱えたくなる。
俺がこんなに嫉妬深いだなんて彼女は知らない。
知られたくないし、頑張ってそう見えないように振る舞っているのに……油断した。
気持ちを切り替えて、ソーセージを購入してから香澄の元へと戻る。
そこには既に男女の姿はなく、代わりに女性二人組が座っていた。
内心ホッとしながら、何食わぬ顔で「遅くなった」と香澄に微笑む。
香澄は、ソーセージを持った俺の手を掴んで引っ張った。
怒ってるのかな。
……当たり前か。こんなに人が多い場所で、ひとりきりにさせてしまったのだから。
俯かせている顔をそっと覗き込む。
「香澄?」
香澄は泣きそうな顔で口を結んでいる。
胸をえぐられたような痛みが走った。彼女にこんな顔をさせるなんて。
周囲の目も気にせず抱きしめる。