旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
しばらく沈黙が続いた後、宝来部長がゆっくりと顔を上げた。ずっと彼のことを眺めていたので、自然と視線が絡み合う。
「吉岡さんは、どうしてこの仕事に?」
「え? えっと……」
どう話そうか迷ったけど、当たり障りのない理由が思い浮かばず、結局ありのままを伝えることにした。
「お世話になっている人たちがいて、将来的に彼等の仕事を手伝いたいと考えているんです」
「同業者ということか?」
「はい。といっても、小さな製陶所ですよ」
「社名は?」
「聞いてもご存知ないとは思いますけど……。幸泉(こいずみ)陶器といいます。幸せの泉と書きます」
「幸せの……泉……」
宝来部長は私の言葉を繰り返す。
「知っているかもしれない」
「ええ!? 本当ですか!?」
信じられないけど、業界屈指の宝来陶苑の御曹司ともなれば、私が思っている以上に世間に詳しいのかも。
「ということは、将来的にはここを辞めて幸泉陶器で働くということか」
「えっ、いやっ、その」
しまった。正直に話し過ぎた。