旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 *

 翌朝、明るくなった部屋のまぶしさで目を覚ました。時刻はもう九時を回ろうとしている。

 昨日は寝るのが遅かったもんなぁ。

 生活リズムが崩れることがないので、こんな遅い時間に起きたのは久しく記憶にないくらい珍しい。

 叔母さんはどこかに出掛けているようで、叔父さんは私と入れ替わりで製陶所に仕事をしにいった。

 仏壇に手をあわせた後、リビングで眠気覚ましのコーヒーを入れながら昨夜のやり取りを思い出す。

 今日、本当に来るんだよね?

 叔父さんがお見合い後も変わらず家にいる私を心配していたから、安心させるためにはよかったのかもしれないけど……。

 なにを隠そう、私は生まれてこのかた異性と付き合ったことがない。

 高校一年生の時にいい感じの男の子がいて、一度だけ学校帰りに遊んだことがある。でも、いつもみんなと一緒にいたから急にふたりきりになってもなにを話したらいいのか分からず、きまずい雰囲気のままその日は別れた。

 中途半端に距離を縮めたせいで、それ以来私たちの関係はぎくしゃくしてしまい、そのまま友達以上に進展することもなく終わってしまった。

 これが私の唯一の淡い思い出。
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