旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 先日うちまで迎えにきてくれた黒い車のもとまでやってくると、「どうぞ」とドアを開けられ、おずおずと助手席に座る。

 あーあ。また明日もバスで出勤するのかぁ。

 少しばかり憂鬱になっている私を乗せた車は静かに動き出した。

 今日は小綺麗にしているとはいえ、埃にまみれた作業着のまま。

 こんな恰好で飲食店なんて入って大丈夫かな。ていうか、車のシートも汚してないかな……。

 次から次へと襲いかかる不安に心労が溜まって辛い。

 また胃がキリキリしてきた……。

 会社を出てすぐ、車はコインパーキングに入る。

「歩いてすぐだから」

 差し出された手に自身の手を重ねる。そこまではいつも通りだったけど、今日の成暁さんは指を絡めて離さない。

 手を繋いでいるから距離も近いし、時折肩がぶつかってドキドキする。

 成暁さんは青い暖簾がかかったお店で足を止めた。麺処と書かれた看板が掲げられている。
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