旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「胃が弱っている時は消化のいいもの食べないと」

「あっ……だから、ここ?」

「そうだよ」と、成暁さんが優しく微笑む。つられて私の頬もゆるんだ。

 時間が早いからか、こじんまりした店内には私たち以外に客がいない。

 老夫婦だけで営んでいるようで、建物も古く時代を感じさせる。知る人ぞ知るといった雰囲気があった。

 私はきつねうどん、成暁さんは天ぷらうどんを注文した。麺は手打ちで、柔らかくも芯がしっかりとしてコシがある。

「美味しい……!」

 高級レストランだけではなく、こういった場所にも詳しいなんてさすがだ。

 成暁さんはにこやかに「よかった」と言う。

 麺を啜るのが恥ずかしいなと思っていたけど、気持ちいいくらい豪快に食べる成暁さんを眺めていたら、いつしかそんなことは気にならなくなっていた。

 うどんと成暁さんのおかげで温かい気持ちになっていたところで、突如本題が切り出された。

「この前は悪かった。でも、軽はずみな気持ちではないことは分かってほしい」

 真剣な瞳から逃げて視線を手元に落とす。
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