旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「考えてみたんですけど、成暁さんに好かれる理由が思い当たりませんでした」

「人を好きになるのに、理由なんていらないって聞いたことない?」

「私は理由がほしいです」と、きっぱりと言い切る。

 成暁さんは、ふう、と吐息を漏らした。

「香澄って、たまに遠い目をするんだよね。そこに弱さや寂しさを感じることがあって心配になる。なんだか放っておけなくて、守ってあげたいって思うようになった。それが好きになったきっかけだけど、今はもっといろんな部分に惹かれてるよ」

 予想外に具体的な理由を聞かされて胸が苦しくなった。

 時折、今まで自身に降りかかった出来事と、これからのことについて耽ってしまうことがある。

 自分ではどんな顔をしているかなんて知らないけど、その瞬間を目撃したのかな。

 やっぱりこの人は、私のことを私以上に知っているのかもしれない。

「長い間眺めることしかできなかった好きな子が目の前にいて、触れられる距離にいる。キスをするには十分な理由じゃない?」

「それは聞いてません……!」

 先日の熱い抱擁を思い出して顔が熱くなる。
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