一期一会
「よく入学出来たわね。もしかして裏口入学かなにか?」

中原君が私の言葉にプッと噴き出した。


「ノート貸してくれるなら、何言われても何も言い返しません」

真面目な顔をして言い返さず、下に出ているアツヒロ君。

それはそれで気持ち悪い。


「俺の貸してやるから。西野も貸してやってくれない?」

何故か中原君が申し訳無さそうに眉を下げる。

……中原君に言われたら断れないじゃん。

「中原君、優しすぎ……」

「すまんすまん」

彼はそう言ってアツヒロ君に英語と理科と国語のノートを渡す。
それを見た私は仕方なく数学と社会のノートを出してアツヒロ君に渡した。


「このご恩は決して忘れません!西野様!智也様!」

アツヒロ君は私達にお礼を言うとダッシュに机へ向かい、真面目に写し出し始めた。


「普段からちゃんとやってれば良いのに」

私は呆れるしかない。

「本当だよな」

クスクス笑う中原君。

「あ」

突然中原君が呟いた。

「ん?」

不思議に思い、アツヒロ君を見ていた私は彼に振り向く。
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