一期一会
「まだ次、行かないのか?」

「もうちょっと見たい」

私はペンギンを見ながら返す。
すると目の前のペンギンが氷の上をツルッと転けた。


「ねぇ」


フフ。なんてシュール。


「西野ってば」


あぁー、この可愛さ堪んない。お持ち帰りしたい。


「瑞季みたいな子供がいるからベンチ用意してくれてるんだろうな」


「!!?」


私はブンッと音が出そうなくらい勢いよく彼の方へ振り返る。


「やっとこっち見たな」


中原君は私を見ながらにっこり微笑んでいる。


「いま……名前……呼んだ……」

「あぁ、瑞季」


また呼んだ!!


あれだけ夢中で見ていた私だが、彼が名前を呼んだことで一瞬でペンギンどころでは無くなった。
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