一期一会
「俺、電話待ってるって言ったのに結局かけてこないじゃん」

「え!」

「だから帰ったら電話して?」

中原君は私を真っ直ぐ見つめながら小首を傾げて微笑む。


「うん…わかった……」

中原君に言われると断れるわけないし、その顔ホントに卑怯なくらい私をドキドキさせる……。


「じゃあな。気をつけて帰れよ?寄り道するなよ?」

「うん、真っ直ぐ帰るね。またあとで」


中原君は手を振ると目の前のマンションへ走った。

マンションの入口前でもう一度振り返って手を振ったので、手を振り返すとやっと入っていった。


また約束しちゃった。

花火大会、楽しみだな……。

その前に家に真っ直ぐ帰って電話しないとな……。


電車の中でずっと中原君のことを考えていた私は、傘を見ながら気持ち悪いくらいニヤニヤしていたに違いない。
< 184 / 302 >

この作品をシェア

pagetop