一期一会
私は自転車を必死に漕いだ。


中原君は私のことなんて何とも思っていない。
私はただの友達の一人……。

だって私のことを想ってくれているなら興味の無い合コンになんて行くわけがない。

それに部活だってあるはず。

それを休んでまで行くんだから……。



潮田さんが中原君の『特別』だっただけ。


もしかしたらさっき中原君から話し掛けてきたのも、合コンでどうすれば良いかとか相談しようとでもしてきたのかな……。


成実ちゃんは何を見て、私達が付き合っているなんて思ったんだろ……。


……嫌だな。


成実ちゃんのせいにしようとしている自分がいる。


私はやっぱり臆病だ。


皆の言葉に期待して、中原君が言ってくれるのを待っていただけ。

関係無いって言えたのも、ただの自惚れと自分から確かめるのが怖かっただけ。


赤信号に捕まると、ふと横を見た。
お店のガラスには私の姿が映っていた。

そこには不細工な顔をした私。
そして肩まで伸びている硬そうな髪。


『俺は西野の髪、好きだけど？』


青信号を確認したら、ハンドルを握る手に力を入れてペダルを漕いだ。
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