一期一会
薄々気付いていたんだ。

初めに私を突き放した彼女は楠木香織《くすのきかおり》。
実は合宿の時に目が合ったのだが、彼女は物凄い形相で私を睨んできた。
彼女と話したことも睨まれる心当たりも無かった私は、違う人を見ているのかと思い辺りを見渡したがそこには私しかいなかった。

彼女に睨まれる少し前に私は話をしていた。
中原君と。

そして私が今関わってる人は一人しかいない。
中原君だ。

それに彼の容姿。

その時から、もしかしたらって思っていた。

だから彼女からあんな言葉を言われても、他人事のように冷静に言葉を返すことが出来た。


教室を出た後、自然と足が違う校舎へと動いていった。

さっきまでの冷静が嘘かのようにだんだん早足になっていく。

そして一気に階段を三階まで駆け上る。


こんな事で行くつもりなかったのにな……。


「亜由と、理沙ちゃん…ついでに勇馬にも、話を聞いてもらおう……」


部活を引退して半年以上まともに運動していなかったので、三階に着くと息も切れ切れ。
廊下を少しスピードを落として息を落ち着かせながら目的の一組を目指す。

そして一組の教室に着くとこっそり窓から中を覗いた。

「皆、居るかな……」
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