一期一会
「今日合コン行かない?いきなりメンバー足りなくなっちゃって困ってるの……。お願い!座ってるだけでもいいから!」
その日の放課後、突然クラスメイトの女子が私の所に来て、両手を合わせて頼んできた。
今、断る理由は無くなった。
困っているなら助けてあげたいけれど、でも知らない人と関るのは苦手だ……。
断ろう。
「……ごめん、私はいいや「行きます!」
え。
私の声の上に被さってきた張り切った声に振り向くと横には笑顔の成実ちゃん。
「私はいいから成実ちゃんだけ行っておいで「瑞季も参加で!」
えぇ!!?
「紘子!アンタも参加決定!」
成実ちゃんは私が反論する前にすぐに続けて離れた席に居る紘子ちゃんの方に振り返って叫ぶ。
「え?何が?」
紘子ちゃんは離れていて会話は聞こえていないようでキョトンとしている。
「三人参加します!よろしくね!コンパ楽しもう!」
紘子ちゃんはまだ内容を理解すらしていないのに勝手に成実ちゃんは返事をした。
「私の予定はお構いなし!?」
コンパになんて行きたくない私はやっと止まった成実ちゃんに抵抗する。
「今日はバイト無いって言ってたじゃん。どうせ暇でしょ?」
が、すぐさま拒否権を与えない笑顔で返された。
「ありがとね!西野さん!成実もよろしく!あと紘子も!他のクラスの子も来るから、準備出来たら西門に集合で!」
その会話を聞いていた誘ってきた女子は私が行くと解釈したのか、笑顔でそう言って教室から出て行った。
「楽しみだね!合コン!」
楽しそうな成実ちゃん。
……自分が行きたいのか。
行く気は無かったのに成実ちゃんが強引に決めてしまったので、私と紘子ちゃんは参加せざるを得なくなった。
するとその時、偶然視界に入ってきた中原君。
ドキっと跳ねる心臓。
私の前の席のアツヒロ君に挨拶して私の方を見ることも無く、彼はそのまま教室を出て行った。