一期一会
そうだよね……どうでも良いよね。

私が合コンに行ったって気にしてもくれないよね……。

彼女いるわけだし……。

ふと俯くといつもとは違う視界に気付いた。

いつもなら俯くと髪が私を隠してくれた。

でも今はその髪は無い。


髪のことを考えると更に胸が苦しくなった。






合コンはカラオケだった。
私は自己紹介以外、男子に話掛けることもせず黙っていた。
カラオケだというのに歌うこともせず、目の前で盛り上がっている彼等を見ながらただ座っていた。

楽しんでいる人には申し訳ないが、知らない人と話して何が楽しいのだろうか。

中原君は今頃、部活かな……。

今の季節、暑いから熱中症とか大丈夫かなーーーー……っ!


私は自分の思考回路にハッとした。


私ってば何を考えているんだろう。


中原君には彼女が出来たわけで。

私がどんなに想っても手に入らない人。

私は友人でいることですら苦しくて、自分から放棄した。


だからもう忘れないきゃいけないのに……


「西野さんも何か歌ってよ」

私が葛藤している最中、男子がリモコンを私に向けてきた。

私は笑顔を作ってそれを受け取った。
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